顧客の頭打ち【事例】追い込まれる日本のテレビ事業

 顧客の頭打ちとは顧客が製品を購入する際、求めている機能水準を上回っている製品を選ばず、その水準を達している安価な製品を購入するという現象を指します。

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日本は機能水準がとても高く、高価だと一般的に考えられています。しかし、日本の技術は本当に優れているのでしょうか。テレビ事業を通してみると日本の技術は劣っているようにも見えます。 

事例:テレビ事業

日本のテレビ市場は現在言うまでもなく成熟市場で、中国企業や台湾、韓国企業がテレビ業界に乗り出し価格競争になっています。価格競争になっていく中で日本のテレビのディスプレイ業界が衰退していきました。現在では海外がリードしている展開です。

フルHD画質より高画質な4Kテレビの技術も海外は、価格競争になっています。例えばハイセンス・グループ(中華人民共和国山東省青島を本拠とする電機メーカー及び企業グループの総称)のHJ50N3000 [50インチ] は現在(2017年12月)、約6万2000円でインターネット上に販売されていて、日本の企業が販売している4Kテレビの約1/2の価格となっています(日本での価格は約10万~15万)。また、2011年12月に東芝が発売した「REGZA 55X3」を皮切りに「4Kテレビ」時代が始まったのですが、当初の価格としては90万円。55型でHDDは2TB、ほかにも多くの機能がついていたが当初から比べると約1/15の価格まで落ちてしまっています。この事例を見てみると、東芝が一番に4Kテレビを発売したが5年後には価格競争に巻き込まれてしまっていることが分かります。そのため海外企業に多くのシェアを取られていると思ったが、調査したところ、海外シェア率は10%に満たないことが分かりました。4Kテレビ日本市場シェア率の海外企業の割合は低いようです。

 

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(※BCN 2016年7月14日4Kテレビ市場動向プレゼンテーション資料 より作成)

これは4Kテレビの日本市場メーカーシェア率です。2016年の6月までしか資料が無いため近年は分からないですが、グラフの動向から海外企業がシェアを伸ばしていると推測されています。また、そのほかの理由としてパネル(ディスプレイ)技術面で日本が不利な状況にあることがあげられます。4Kテレビのパネルに関してですが、製造しているのはシャープとLGで、一部ソニー東芝が自社生産をしています(東芝に関しては生産をしていたがテレビ事業を完全撤退した)。それに加え、近年では4Kテレビより高画質な有機ELテレビが発売されていますが、そのパネルを製作できるのはソニーパナソニックとLG。ですが、ソニーパナソニックは中小型の有機ELパネルまでしか製造できないそうです(大型を作成する工場がない)。一方、LGは大型テレビのパネルも対応しています。そのため、パネルの技術面から今後、海外企業(韓国企業LG)のシェア率は増えてくるだろうと予想されます。

 この背景には日本企業のテレビ事業を撤退や縮小、人員削減、売却がより技術が海外の企業に渡ったことがあげられます。しかし、映像エンジンによって変わる画作り、商品コンセプトを含めたモノ作りは日本技術のノウハウが生きており、パナソニックソニー東芝映像ソリューションと、企業によってディスプレイの見え方は異なります。そのため、日本のテレビがまだ売れ続けてい状態にあります。

 パネル(ディスプレイ)技術は海外企業に抜かれたが、映像エンジンの出力技術で日本のテレビ製品は付加価値を付けていて、首の皮一枚でテレビ事業に存続している状態にあります。